古代文学の常識−万葉集の時代−

  出典:「國文學」學燈社1997年7月号第42巻8号  

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はじめに  
 はじめに

 万葉集を初めとする古代文学は、現在私たちが目にする書物のほとんどが、長い間の研究成果です。素人の私たちが、慣れない言葉であっても、ある程度読みたい、と言う意欲さえあれば、そんなに難しいものではない。万葉集、古今和歌集など、こころ打たれる和歌も、文字の普及そして写本という過程を経て現在に残されている。                 

 今の時代では、文書は容易にコピ−され保存され、任意の人たちに何の障害もなく提供される。しかし万葉の頃の歌詠みたちは、どんなにか苦労したことだろう。ただ詠むだけなら、それはまさに一瞬の想いを詠ったものとして、それなりに歌人も満足はするだろう。それが後世になっても歌い継がれるほどの作品になるなら、この写本と言う酷酷な作業は、その光も当たらない作業であるが故に、今更ながらに心を以って感謝しなければ、と思う。
 

 万葉集の三十一文字に想いを凝縮した和歌。それは、平安時代の学者たちによって初めて試みられた。はたして、それが本当に万葉の時代の詠歌なのか.、それは分らない。
    平安時代、すでに確立されていた三十一文字の心が、万葉の歌を再現させたと言うことは間違いないにしても・・・。
 

 この「古代文学の常識」は、万葉の時代に於ける、さまざまな「?」を簡易に、そしてその参考文献の紹介など、とても役立つ本だと思う。勿論、現在に至るまで、この本が刊行されてからも数多くの関連書物が世に出ている。特に傾向としては、非アカデミックな読みやすい論調の作品も目立つ。それらを読んで楽しむのも、また素人の特典かもしれない。

     
 この新設「古代文学の常識」は、全ペ−ジ引用文だが、こうした専門的な現状での知識は、必要に迫られれば当然探さなければならないし、それもある程度の指針がなければ、私たちのような普通の愛好家には、ちょっと難しい。その意味でも、全文掲載を試みた。



        

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