この巻第四は相聞のみから成るが、ただし譬喩歌を巻三に割譲したことは先に述べた。全体、年代順に並べてあるが、そのうち比較的に古い時期の歌詞の記事の不正確なものが多く、作者名を記してあっても、しばしば、そのままには信じ難いということがある。
そもそも冒頭の「難波天皇」についても、第十六代仁徳天皇と第三十六代孝徳天皇の二説があり、本書では仁徳天皇とする説によったが、孝徳天皇説も必ずしも退け難いと思われる。その次の「岡本天皇」に関しても、第三十四代舒明天皇かその皇后の皇極(斉明)天皇即ち「後岡本宮御宇天皇」か明らかでない。歌中の用語からみれば女帝らしいが、伝誦を経たに違いないこれらの歌について、後世の文学作品と同じように作者の性別や作歌の動機を詮索することは意味がないのではなかろうか。左注に、
右、今案(かむが)ふるに、高市岡本宮、後岡本宮、二代二帝各異にあり。
ただし、岡本天皇といふは、未だその指すところを審(つばひ)らかにせず。
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