古今和歌集の部屋
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2004年5月31日        古今和歌集巻第十六

      哀 傷 歌

       さきのおほきおほいまうちぎみを、白川のあたりに送りける夜よめる    素性法師
 


   830  血の涙おちてぞたぎつ白川は君が世までの名にこそ有りけれ

 
 哀しい、流れ止まらぬ血の涙が
 白川の水を赤く染めてしまう
 赤く染まった白川は、もう白川などとは言えない
 この川の名は、 あなたが生きている限りの名をしるす
 
 前太政大臣藤原良房の葬送を終えたあとの、血をも枯らすほどの哀しみ
 この川は、あなたとともに逝き、また生まれ代わる
 その人の存在が、こうも大きいものだったのかと、その人とともに逝く


 哀しみは何もかも奪う

 私の血の涙で染まったのではない

 白川を、あなたが連れていってしまうのか

 死者に伴がいることを、私はいっそう寂しく思う

 それが、あなたの寂しさを拭うのであれば

 私の哀しみは、癒されよう

 
 
2004年9月20日        古今和歌集巻第十六

      哀 傷 歌

       あひ知れりける人の身まかりにける時によめる

                                      みぶのただみね

   835  寝るがうちに見るをのみやは夢といはん はかなき世をもうつつとはみず

 

 寝ているときだけに見るのが、夢ではない

 こんなに悲しい現実に直面すれば

 それこそ、誰しもが夢だと思う...夢だと思いたい!

 現実逃避は、決して前向きな生き方ではないが

 夢の中にすべてを置いてしまいたい

 そんな「弱い」と言われる人の生き方にこそ

 ある意味では、生きるための手掛かりがあると思う

 

 自分が、どんなに苦しんでいようと

 すべてが夢であったら、と逃避を望もうと

 目の前に、同じように打ちひしぐ人がいたのなら

 かすかながらも、その心の支えになりたいと

 自分の気持ちを奮い立たせることも

 決して少なくはない

 それは、知らず知らずのうちに

 自分の弱さを、踏まえた上での前向きな生き方になる

 

  どんなに悲しくても

 自分の慈愛の深さを信じるならば

 たとえ、それが気弱に映ろうとも...もっとも強力な生き方になる

 哀しみは...悲しいときは、現実逃避でも構わない

 夢だと思う気持ちが、偽りではないからこそ

 その哀しみの深さが、自身の力になるのだと思う