古今和歌集の部屋
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2002年6月1日       古今和歌集巻第一

      春 歌 上

       ふるとしに春たちける日よめる        在原元方

   1  年の内に春はきにけり ひととせをこぞとやいはん ことしとやいはん

 この歌は、暦の綾を知らないと、意味が通じないかもしれない
 年内に立春が来るというのは、今では考えられないが
 そもそも現行の太陽暦が制定される以前の暦の歴史は
 飛鳥時代にまでさかのぼる
 その時代から、明治時代の太陽暦までの間
 多くの暦が制定されては、消えていった
 この歌のように、年を越さないうちに立春を迎えることもあったようだ
 
 同じ一年を...年内というのか、去年というのか
 今年の夏と言えばいいのか、去年の夏、と言えばいいのか...
 新春の喜びを感じつつ、ふと戸惑うこころ...


 
2002年6月2日        古今和歌集巻第一

      春 歌 上

       春たちける日よめる             紀貫之

   2  袖ひちてむすびし水のこほれるを 春立つけふの風やとくらん

 袖が濡れ、手にすくった水を
 立春の風が、とかしているのか
 おそらく、そうだろう
 どこかは分らないが
 水辺の、のどかな光景が浮かんでくる
 爽やかな風...立春の風の歌
 風が印象に残る歌に感じられる


 
2002年6月4日        古今和歌集巻第一

      春 歌 上

       題しらず                  よみ人しらず

   3  春霞たてるやいづこ み吉野の吉野の山の雪は降りつつ

 霞が立っているのはどこなのか
 少しも春の気配が感じられない
 いまだに、雪が降るではないか・・・


 春を待ち続ける気持ちが、自然と強くなってくる
 今か今か、と待ち続けるのに
 雪よ・・・お前が・・・


 
2002年6月14日        古今和歌集巻第一

      春 歌 上

       二条のきさきの春のはじめの御うた      (二条のきさき:清和天皇の皇后)

   4  雪のうちに春はきにけり うぐいすのこほれる涙いまやとくらん

 
 雪のまだあるうちに春はきてしまった
 鶯でも鳴けば...涙がこぼれてしまいそうだ
 
 雪が降れば冬、桜が咲けば春...
 しかし、人の心には、常に四季が混在する
 その感情ゆえに、人は歌を詠めるのかもしれない


 一体、春雪...人それぞれの気持ちを
 常の状態から、戸惑いと不安、そして希望とを織り交ぜて
 どこまでも淡く、白く...舞う
 そして、心を舞わせる
 
2002年6月16日        古今和歌集巻第一

      春 歌 上

       題知らず                   よみびとしらず
 


   5  梅がえにきゐる鶯春かけて 鳴けどもいまだ雪はふりつつ

 
 梅の木の枝にきている鶯が
 春だ春だと鳴きはするが...
 まだまだ春は遠いようだ
 
 春が近づくと
 気ばかりが先に季節を迎えてしまう
 秋を待ち望むより
 冬を待ち望むよりも、春は人を先に走らず
 そんな人の気持ちを遊ぶように
 春は、ゆっくりとやってくる
 小雪の舞う小枝の、鶯の鳴き声を聞けば
 やあ、お前もか、と微笑んでしまう
 
2002年6月22日        古今和歌集巻第一

      春 歌 上

       雪の木にふりかかれるをよめる         素性法師
 


   6  春たてば花とや見らむ白雪のかかれる枝にうぐひすの鳴く

 
 枝に降り積もった雪を
 鶯は花と思って、鳴いているのだろうか
 
 季節の花の素養のない私でも
 待ち遠しかった開花は
 自然と歌いたくなる気持ちにさせる
 季節の変わり目に感じる、寂しさと期待
 鶯は、詩人、いや詩鳥なのだろう
 そして、それを見て心に感じる人
 それが、詩人なのかもしれない
 
 今、梅雨のさなか...
 鶯の鳴き声が、木魂する
 何に感じ、鶯は鳴くのか
 ふと、聞き耳を立ててみる
 
2002年7月9日        古今和歌集巻第一

      春 歌 上

       題しらず                   よみ人しらず
 


   7  心ざし深くそめてしをりければ消えあへぬ雪の花と見ゆらん

 
 花のように雪がついている小枝
 誰が、どんな意図で折ったものか
 消えようとしない雪が
 まだ命は終わらん、と
 折れた枝に咲く雪...
 
 立ち木の小枝に咲く雪を
 春を心待ちする気持ちから歌に詠むのはよくあること
 しかし、折れた枝に花のようについている雪を
 風情と想う心は
 常に自然への優しさがないと、見逃してしまう
 いや、見逃すのではなく
 気づいても、何も心に響かないのだと思う