ベートーベン Ludwig van Beethoven   (1770〜1827、ドイツ) 

 

 ベートーベンについては、おそらく改めて書くほどでもなく、多くの人が知っていると思う。私が初めてクラシックに出遭ったときも、ベートーベンを抜きにクラシックを語れなかった。英語のテキストでも読んだ記憶がある。それほどベートーベンは、音楽家にとって、また音楽愛好家にとって特別な存在だと言える。

 モーツァルトに至るまでの宮廷音楽全盛の時代、晩年のベートーベンが奏でた音楽は、まさにロマン派への橋渡しと言われるように、人間の内面性に深く関わっていく。彼自身が、難聴の病と闘っていたことも、その音楽性に充分過ぎるほど表れている。

 ベートーベンが残した多くの曲の中でも、生涯書き続けたのは、交響曲、ピアノソナタ、弦楽四重奏曲だと言える。

そして、それぞれが作品順に聴いていくと、まさに個人の変遷と言うよりも、音楽史の変遷をも思わせるほどの見事さがある。それは、一般的には交響曲の第九に語られるように、「苦悩から歓喜」と表現されもするが、もっと突っ込んだ言い方をすれば、晩年になっての彼の音楽は、音楽そのものが、まさに人間性を前面に打ち出した自由への渇望さへ感じさせる。勿論、当時の自由と言うのは、我々が現在感受している自由ではなく、人間的、内省的な自由への表現を楽曲に担わせている。

 

 有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」。26歳から始った難聴は、彼に自殺さへも決意させた。音楽家にとって、音が聴こえないことがどんなことなのか、その苦悩は想像できる。そして、その想像以上に苦悩したであろうことも...それは、健康な人間が、病人の気持ちを思う限界があると同じように、また想像を絶するほどの苦悩だったと思う。

 しかし、彼はそのどん底の苦悩を克服し、全く新たな創作活動に入る。感情を前面に押し出した「英雄交響曲」をはじめ、多くの傑作は、この時期を境に生み出されている。彼の集大成は、確かに「第九交響曲」に違いないが、私には晩年の彼の弦楽四重奏六曲(第12番から16番、そして「大フーガ」)を、私自身の終生の標に置いておきたい。

 

 

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